【商探訪】成功企業の“ヒミツ”を知ろう! 第2回:JR大津駅のスタバを分析してみよう!

ゆうゆうかんでは、商業者の方向けに専門家の方々から商業・産業にまつわるさまざまな事例を紹介していただくセミナーを企画しています。今回はブログセミナー形式で、中小企業診断士の 田内孝宜氏 にスターバックスを事例とした成功企業の秘密をご紹介いただく企画をお送りいたします。


 前回は、スタバの歴史を振り返りつつ、特長についてご紹介しました。そして、文末で「1,000の店舗、1,000の個性」という言葉を掲載し、第2回への布石としました。


《スターバックスはチェーン店か?》
 チェーン店の一般的なイメージの一つとして、「標準化戦略」が挙げられます。標準化戦略とは、どこの店舗に行っても同じ商品・サービスが、同等の水準で提供されるという、効率化を推進した先にある一つの完成形と言えます。コンビニエンスストアをイメージすると、ご理解いただきやすいと思います。

 直営店かフランチャイズかという差があるにしても、スターバックスもチェーン展開をしています。そして、掲げられている言葉は、「1,000の店舗、1,000の個性」です。これは相反していると思いませんか?

 標準化を推し進め、効率の良い経営を目指すのであれば、「1,000の店舗、1の個性」となるはずです。しかし、そうではない。そこにスタバが受け入れられる一つのヒントがあるのではないでしょうか。


《某飲食店経営者のスタバに対する評価》
先日、草津市等で複数のカフェ・飲食店を経営する某経営者に話を伺う機会がありました。その中で、印象的なことを仰っていましたので、要約してご紹介します。

(以下、経営者の言葉(要約))

 スターバックスのコンセプトは「サードプレイス(※第1回ご参照)」です。そして、スタバのステータス、ブランドイメージを支えているのは、「高単価商品」と「高品質サービス」です。


図1 ポイントの整理
ポイント
内 容
高単価商品
・平均単価:450円〜500円
・同業他社(コーヒーチェーン店)と比較して高い
高品質サービス
・ハイクオリティな店員
 → 80時間の研修を実施。通常、コストの観点等から研修にかけられる時間は10〜20時間程度であり、圧倒的に手厚い教育
・インテリアに拘った空間作り
・その他、Wi-Fi環境の整備、店内禁煙 等


 単純化すると、高品質なサービスが提供されているので、高単価な商品を買ってもらえるということになります。あるいは、お客さまは、商品そのものに対してのみ、お金を支払うのではなく、「スタバで過ごせる」という経験に対して価値を感じ、対価を支払っていると言えるかもしれません。

 そして、このようなスタバのやり方は、「個人店のやり方」に近いです。つまり、お客さまひとりひとりのことを考え、商品・サービスを提供しようとしています。

(以上、経営者の言葉)


《チェーン展開する個人店》
 上記の言葉にどのような印象をお持ちになりましたか?

 今までの話をまとめる、スターバックスはチェーン展開しているが、各店舗は「個人店」のような「個性」を持っている、ということになります。同感だと思われる方もいらっしゃるでしょうし、異なる考えを持たれる方もいらっしゃると思います。

 ここで、改めて第1回で紹介したスターバックスHPに掲載された言葉の冒頭部分を記します。


お客様にとっての"The Only One"として愛されるために、
私たちは一杯のコーヒーを通じて、
地域のお客様一人ひとりと丁寧に向き合います。
 

 明確に、「地域のお客様一人ひとりと丁寧に向き合います」と書かれていますね。

 スターバックスは、上質なインテリア等のハード面では高い水準での標準化を進めながらも、お客さま対応というソフト面においては、杓子定規な標準化をお客さまに押し付けることなく、丁寧な対応を実施しています。そして、それを可能にしているのが上述の「80時間の研修」に代表されるハイクオリティな店員であり、お客さまはその価値を認めるので高単価であってもスタバで過ごしたいと感じるのではないでしょうか。

 また、お客さまと向き合うという観点では、「店舗そのもの」というハード面でも工夫がなされていると感じます。居心地の良さを提供するための上質な雰囲気作り(照明、什器、店舗レイアウト等)が成功しており、どの店舗でもそれぞれに「スターバックスらしさ」を表現できているのではないでしょうか。

 繁華街の店舗では、大きなテーブルが用意され、混雑時はそのテーブルを囲むように相席が実現したり、ビジネス街では、PCを利用したいビジネスパーソンのために、窓際カウンター席が多目に配置されたり、それぞれの店舗が立地する街の特徴に合わせて、「居心地の良さ」を提供できるような工夫があると感じます。

《JR大津駅スターバックスの立地》
 滋賀県統計書によると、平成26年におけるJR大津駅の1日あたりの平均乗車人員は17,251人です。単純に申し上げると、毎日17,251人がスターバックスの側を通過していることになります。
 
 JR大津駅の周辺には県庁を始め、滋賀銀行の本店・支店、大企業の滋賀支店等、多くの会社員が勤める建物がたくさんあります。また、それら大組織の間を縫うように商店街が走り、その周辺には住宅も密集しています。




図2 Google検索結果:JR大津駅前における「喫茶店」
 ※ 検索結果に出ていない店舗もあります


 図2を見たところ、「会社員がいる」「商店がある」「住宅地もある」という条件が揃っている中で、カフェ・喫茶店が少ないという印象を持ちました。特に、JR大津駅前に着目すると、スタバが無いと想定した場合、県庁や滋賀銀行の本店・支店の方等の通勤路に乗っていると思われる店舗は2、3店しかなく、「帰宅前に一服して本でも読もう」という「サードプレイス」を提供できるお店が相対的に不足しているように感じます。


《パルコ店とJR大津駅店の違い》
 大津市内には従来から、大津パルコにスターバックスが入っていましたね。パルコ店とJR大津駅店にはどのような違いがあるのでしょうか?

 私なりに感じていることをまとめてみました。


図3 パルコ店とJR大津駅店の違い
項 目
パルコ店
JR大津駅店
立地
・商業施設「パルコ」の一部
・JR大津駅に隣接
周辺環境
・西武百貨店やときめき坂周辺に喫茶店、カフェが存在
・近隣にコメダ珈琲が出店しており、高齢者の憩いの場となっている
・西武百貨店やパルコ利用客とスタバの顧客の属性が重複しており、親和性が高い
・県庁を始めとしたオフィス街
・JR大津駅利用客は、毎日平均17,251人
・駅から少し離れると、昔ながらの商店街や住宅地等が存在
・サードプレイスの空白地帯
ターゲット
・主婦層、学生
 → 商業施設での買い物等と合わせた利用
・JR大津駅利用客
 → ビジネス客および京都観光のための宿を大津駅周辺で予約する客


 上記は、飽くまで私個人の印象をまとめたものです。実際に詳細な店舗調査を実施すれば、「1,000の店舗、1,000の個性」に表現されるような、店舗ごとの個性の違いがさらに浮き彫りになってくると思います。


 次回、第3回では、今まで見てきた内容を総合し、マーケティングの考え方の一つである4P(Product、Price、Place、Promotionの4つの頭文字)を用いて、スタバJR大津駅店の分析をさらに進めていきたいと思います。



(第2回 終了)


今回の記事はいかがでしたか? 次回は3月20日アップ予定です。ご意見は下記コメント欄からお寄せください。
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